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好きな馬    04/10/2007
今週、私の好きな馬がまた走る。

彼は、私に競馬というものに出会って初めて「逃げ」という戦法を教えてくれた。たった一人の孤独な旅。ハナを決して譲らず勝負どころではただひたすら粘る。旅の途中で誰とも会わない孤独な旅だ。

すべては歓声を浴びるため。すべては最初にゴールに辿り着くため。

ただ、誰よりも速く走るため。

彼は本当に気持ちよさそうに走る。私はそんな彼が好きだった。

その時、彼は4歳。前年の宝塚記念で3歳史上最高位となる成績をあげていたせいもあって人気もあった。

同年の安田記念でも3着。
その時の鞍上はベテランでも、若手でもない中堅の騎手。ただその中堅騎手はアメリカに武者修行にした努力家だった。

そして、このコンビはフランスのマイル路線の最高峰レースムーラン・ド・ロンシャン賞で2着という好成績を残した。

だが、同年の天皇賞・秋で事件は起きた。中堅騎手と因縁のある騎手がハナを奪い合った。そして、中堅の騎手たちは前半1000mで56秒9という無謀なハイペースを繰り出してしまった。いつも気持ちよさそうに走る彼の気持ちなど考えずに。そのせいもあって、同レースを大敗する。最後は苦しそうに走る彼の姿は脳裏に焼きついている。

そして、中堅騎手は鞍上を下ろされた。当然のことだった。競馬では若さゆえの過ちなどいう言い訳は通じない。

その後、彼の鞍上は様々な名ジョッキーが跨った。しかし、前年の好走が嘘のように負け続けた。

だんだん私は彼の走りが苦しそうに見えて仕方なかった。

そして、時は経ち彼は7歳になった。引退という言葉が頭をよぎる。その年の夏。彼の走りが変わってしまった。気持ち良さそうに走るのではなく、馬込みの中でジッと耐えて、勝負どころで一気に伸びる走りに。

それもありなのかもしれない。長くいい脚を使える彼だ。一つの選択肢でもあったのかもしれない。

彼は変わったんだ。。。人間も歳をとれば変わるように、馬も変わるのだな。仕方ないことだ。世界で生きていくには最良の方法を見出さなければならない。それがリアルだ。一つのことをやり続けることは容易ではない。彼は勝つために変わることを選んだ。そういうことさ。

ただ引退する前にもう一度でいいから、あの気持ち良さそうに走る彼が見たいな。それが私の気持ちだった。

そして、8歳での初戦。舞台は得意の中山。
実は人知れず心躍る私がいた。

理由は簡単だ。

あのコンビが帰って来る!!

鞍上にはベテランと言われるの域に成長したあの騎手がいた。もしかしたら気持ち良さそうに走る彼が見れるかもしれない。いや、昨年からの差しの競馬をするのか。期待と不安が入り混じりなんともいえない複雑な気持ちでもあった。

馬場に入るとベテランの域に達した騎手は彼の鬣を懐かしげに撫でていた。

「久しぶり、元気だったか?」
そう問うように。

ファンファーレのあと、ゲートが開いた。

ポンッと、栗毛の馬が姿を現した。すべての観客が見とれてしまうほど美しいスタートだった。そして、一馬身、二馬身と後続を突き放していく。それは、年明けのレースで圧勝した黒鹿毛の逃げ馬ではなく栗毛の彼だった。

よしっ!!思わず拳を握り締める。あのレースが見れるかもしれない。私の心には期待しか残ってなかった。

そこには、本当に気持ち良さそうに走る彼がいた。そして、鞍上も然り。

ベテランの域に達した騎手はいままでどんな気持ちで彼の走りを見ていたのだろう。同じレースにでて顔を合わせることもあっただろうに。彼の横を駆け抜けた日もあっただろうに。

彼が変わってしまったときどんな気持ちだったのだろう。中堅時代とは変わってしまった別の顔を持つ彼に嫉妬したのか。もう関係ない馬と割り切っていたのか。

私はこの日のレースを見て思った。彼と中堅騎手との時間は4年前の天皇賞・秋で止まったままだと。また時間が動き出したのだと。

しかし、あの日のことを償うことなど出来ない。共に過ごせなかった時間を取り戻すことなど出来ない。

だが、お互い前を向くことはできる。大切なことは歩むことをやめないこと。昨日より強くなること。

彼も中堅騎手もどん底のなか歩むことだけはやめなかった。どんなに苦しくても。どんなつらくても。

そんな積み重ねの中で、彼らは再び出会うことが出来た。

そして、彼らはあの時と同じスタイルを貫いた。彼らには「逃げ」以外の方法など知らない。だからこそ、できる走りがある。迷いなき走りが。

中山の急坂を登って後続が押しかけるのを無視するかのように突き放し、彼らは一人旅を続けた。そして、二人は四年ぶりの同時ゴールを果たした。

彼らは出会い・別れ・そしてまた出会った。ベテランの域に達した騎手はもう過ちなど起こさないだろう。誰もが別れのなかで大切さに気づき後悔する。別れたものと再び出会えることなどほとんどない。きっと、この出会いを大切にしてくれるはず。そうでなければ、人前では決して涙など見せない。そう願いたい。


レース後、ベテランの域に達した騎手は、
「今日はチャンスをもらえて嬉しかった。この馬のことがずっと好きでした。乗ったときはいつも一生懸命に乗ってきて、今日は先生に恩返しができました」

そうコメントを残した。涙しながら。

一期一会。出会えたことに感謝。
そして、頑張っている人は必ず誰かが見ていてくれる。

決して歩むことをやめないこと。そんなことを教えられた競馬だった。

そして、また彼のことが好きになった。きっと同じスタイルを貫いてくれる。彼が引退するまで見守っていきたい。そして、鞍上にはずっとあの騎手がいるはずだから。


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長文でしたが読んでくれてありがとうございます。

久々に長々と書いてみました。書きたい書きたいと思っていたのですが、mixiだと気が引けて。。。時間もなかったし。またヒマがあれば書くので読んでみてください。

ではでは、

最後に一言、「今日も好きなコンビが走っています。頑張れ。」
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